安いとは買う側がどう感じるかが全て。競合調査の重要性
ダイレクトメールの反応が悪くなってきて、競合他社の集客方法や広告などを調べています。広告が見込み客によって判断されるのは一瞬の出来事。時間をかけて説明すれば理解してくれることも、広告の文面では伝えられない場合がある。ということについてとその対策について考えてみました。
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集客方法が通用しなくなった理由の仮説
私の勤務している税理士事務所では、特定の法人に向けてダイレクトメールを送るという集客方法をメインにしていました。
私が転職してきた5年位前は今の倍以上の反応があったのですが、2014年の後半くらいから反応率が落ちてきたようです。
2年前からネット広告も始めていたので、致命的なほど問い合わせの数自体は減っていないのですが、税理士業界のマーケティングに変化があったことを感じます。
なぜダイレクトメールで集客ができなくなったのか。
考えられる理由は大きく2つある。
タイミングの問題
ダイレクトメールでは、税理士による顧問税務サービスの集客を行っている。一度顧問契約をすると、基本的には長期間のお付き合いになる。
今月はここに頼んで、来月はあそこ。というお客さまはいない。1年単位でもとっかえひっかえするようなことはないが、不満があれば税理士を変更することはある。(昔は不満があっても税理士を変更するという発想自体がなかった時代もあるそうだが...)
集客できるタイミングは2つ。すでに顧問契約を交わしている税理士がいるが、不満があって税理士を変更したいと思っているタイミングでダイレクトメールが届くようにするか、まだ顧問税理士がいない法人にダイレクトメールを送るか。
反応が悪くなってきたのは、後者の顧問税理士がいない法人向けのダイレクトメール。タイミングに問題があるとすると、ダイレクトメールが届いた時点で既に税理士と顧問契約を結んでしまっているということが考えられる。
仮説その1。会社設立の時点で、すでに税理士の顧問契約を済ませている。
行政書士を擁する税理士事務所が、会社設立にかかる実費だけで(手数料0円)手続きを行っているサービスにお客をとられている可能性が考えられる。
会社設立費用を安くする代わりに、税理士の顧問契約をセットで販売する形態である。その主な集客方法はネット。(アナログな集客方法も行っているかは不明)
お客さまの行動としては、会社設立の方法をネットで調べる→手数料0円なら自分でやるより安い→そのまま税理士とも契約。
ネット広告では一定のコンバージョンが安定して発生しているので、税理士と契約するタイミングがここ数年で早くなっているというのはあるのではないかと考えられます。
ダイレクトメールが届く前に、自分で検索して税理士を決めてしまっているという変化。
安さの問題
会社設立と税務顧問サービスのセットが本当に安いのかということについては後述する。
まだ顧問税理士がいない法人は、スタートしたばかりの法人がほとんど。ダイレクトメールで宣伝しているサービスは、そういう法人向けのサービスなので料金は安くしている。
反応が悪くなった理由として考えられるもう一つの理由は、安さで他社に負けているということ。
顧問税務サービスとしては相場より安いはずなのだが、何に負けているのか思い当たるところがある。
仮説その2。記帳代行サービスと料金を比較されて負けている
顧問サービスとは別のサービスだが、記帳代行サービスと比較されている可能性が考えられる。
記帳代行は資格がなくてもできるサービスで、料金はかなりやすい。記帳代行だけでは申告ができないが、申告だけを単発で依頼できる税理士もいる。
安さの定義。すべてはお客次第
記帳代行と税務顧問サービスは、サービス内容が違う。だから料金も違う。税理士事務所側から見れば、違いはわざわざ説明するほどのことでもないけど、お客の視点からは違う。
サービス内容の違いがぱっと見で分からない。だから、料金だけに目が行く。というのはあると思う。
サービ内容の分かりづらさは税理士という商売の弱点のような気がする。ちゃんと説明する機会があれば伝えることもできるのかもしれないが、一度体験してみないと分からない部分が大きい。
ビジネスをする上で、安さとはお客からみて安いと感じるかどうかだ。会計と税務は違うなんて言われても素人は分からない。税務顧問と記帳代行を比べて単純に安い記帳代行を選ぶというのは、自然な選択だと思う。
記帳代行だけを頼んでみて体験した後に「税理士に税務の相談もしたい」というニーズが生まれるケースは多いのではないだろうか。記帳代行サービスを行っている税理士事務所があるが、その場合スムーズに顧問契約に結びつけることができて、上手い仕組みだ。
会社設立と顧問契約のセット販売についても同じことが言えると思う。
料金と品質は基本的には表裏一体だけど、払った料金より得た品質が高いと感じれば満足が生まれるし、客からしてみてもそういうところを選びたいと考える場合は多い。
しかし、初めて会社を設立して税理士と契約するお客にとって、そのバランスを判断するのは難しい。税理士の良し悪しは頼んでみないと分からない部分が大きいし、そもそもどんなことをしてくれるのかが分かりづらい。
会社設立費用が安く済んでも、税理士の顧問料が高かったらすぐに回収できてしまう訳ですが、判断する基準を持っていない人が相手なのでうまい商売だなと思う。
ボッタクリだと批判している訳ではなく、だいたいこの手のサービスは大手事務所が行っているので、大半のスタートしたばかりの法人にとって品質が高く、むしろ品質を落として料金を抑えるという考え方も最初はありかなと思っているので、そういう戦略の他社と戦う前に(比較される前に)勝つという戦略が上手いなと感じたということ。
極端に言うならば、過剰に高い品質のサービスを受けていたとしても、比較する対象がなければ、高いと感じることができない。むしろ、こんなものかと思ったり、安いと感じることすらあるかも知れない。
安いとは買う側がどう感じるかが全て。特にサービス業だと、本当に安いかどうかは関係ないと思っていたほうが良さそう。
サービス内容や価格を変えずにどう対抗するか
サービス内容や価格を決められるのは経営者。これらは僕のようなマーケティング担当者ではどうしようもない。
では、どうやって対向するか。
タイミングの問題については、ネットという同じ土俵で戦うしかない。お客の行動は変えられない。客に合わせるべきだと思う。
ランディングページで、「本当の安さ」について丁寧に説明できれば、勝機はあると考えています。
売り方では、会社設立とのセット販売や、記帳代行を入口としたやり方に負けますが、税務顧問サービス自体の商品力では戦えると思うので、こちらを選ぶ合理性のある人は一定数いるのではないかと。
ランディングページへ誘導した後は、キャッチコピーで惹きつけて、競合との比較情報を載せて有利な部分を強調し、しっかりとクロージングする。という基本を抑えたランディングページを作れるかどうかが鍵になります。
それをするためには、競合調査が一番重要、というのを強く感じました。
結局、どこかと競争になるので、調査と分析をしないと始まりませんね。